Genitourinary Cancer Today 2022 No.4
ASCO Annual Meeting 2022:腎細胞がん
#4501 効果の深さと臨床転帰の関連性:未治療の進行性腎細胞がん患者を対象としたCheckMate 9ER試験における探索的解析
Association between depth of response and clinical outcomes: exploratory analysis in patients with previously untreated advanced renal cell carcinoma in CheckMate 9ER
Cristina Suárez氏(Vall d’Hebron University Hospital)
更新日:2022年9月2日
進行性または転移性腎細胞がん(RCC)患者において、ニボルマブ+カボザンチニブの併用(NIVO+CABO)を受けた患者は、スニチニブ単独(SUN)を受けた患者と比べて効果の深さ(depth of response、DepOR:標的病変における最大腫瘍縮小率)がより深く、また効果が深いほど無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)がより向上することが、第Ⅲ相CheckMate 9ER試験の探索的事後解析から示された。
本試験の対象は未治療の淡明細胞型を有する進行性または転移性RCC患者651例で、NIVO+CABO群(ニボルマブ 240mg 2週毎静注、カボザンチニブ40mg 1日1回経口投与)に323例、SUN群(スニチニブ50 mg 1日1回4週経口投与、2週休薬)に328例が無作為化された。主要評価項目のPFS、副次評価項目のOSおよび奏効率(ORR)は、いずれもNIVO+CABO群がSUN群と比べ有意に向上することが示されている1,2)。
今回の探索的事後解析では、効果の深さによって患者をCR(完全奏効)、PR1(標的病変の縮小率が80%以上の部分奏効)、PR2(標的病変の縮小率が60%以上80%未満の部分奏効)、PR3(標的病変の縮小率が60%未満の部分奏効)、SD(安定)、およびPD(進行)の6つのサブグループに分類し、無作為化から6カ月後のランドマーク時に無増悪生存または生存していた患者におけるPFSとOSと、奏効までの期間および奏効期間、治療関連有害事象(TRAE)との関連性を検討した。観察期間中央値は32.9カ月だった。
解析対象はNIVO+CABO群が293例、SUN群が253例だった。NIVO+CABO群におけるDepORの分布は、CR 14%、PR1 11%、PR2 13%、PR3 24%、SD 34%、PD 5%、SUN群ではそれぞれ7%、4%、7%、19%、49%、15%だった。60%以上の腫瘍縮小率を示したのはNIVO+CABO群では38%だったのに対し、SUN群では17%に留まった。
無作為化から6カ月目をゼロ時点としたランドマーク解析による12カ月PFS率は、NIVO+CABO群の場合、CRが94.9%、PR1が81.3%、PR2が72.1%、PR3が46.7%、SDが33.5%で、効果が深いほど12カ月PFS率が高かった。SUN群ではそれぞれ82.4%、37.5%、53.2%、57.0%、22.6%だった。また18カ月OS率は、NIVO+CABO群ではCRが97.5%、PR1が97.0%、PR2が83.5%、PR3が78.3%、SDが59.6%、PDが35.7%、SUN群ではそれぞれ100.0%、100.0%、88.2%、75.3%、68.0%、39.1%で、2群とも効果が深いほど良好であるとともに、CRとPR1は同等のOSベネフィットが得られることも示された。
奏効までの期間中央値は、NIVO+CABO群ではCRとPR1、PR2がいずれも2.8カ月、PR3は2.9カ月、SUN群ではそれぞれ3.4カ月、3.5カ月、4.2カ月、5.7カ月だった。奏効期間中央値はNIVO+CABO群ではCRが未到達(NR)、PR1が26.2カ月、PR2が24.9カ月、PR3が10.8カ月と、効果が深いほど奏効期間が延長していたが、SUN群にはそのような傾向はなかった(CR NR、PR1 7.0カ月、PR2 15.2カ月、PR3 10.9カ月)。
TRAEの発現率は、全グレードおよびグレード3/4のいずれも、DepORのサブグループ全体で一貫していた。
1)Choueiri TK, et al. N Engl J Med. 2021; 384(9): 829-41.
2)Powles T, et al. J Clin Oncol. 2022; 40(Suppl 6). Abstract 350
監修 加藤 大悟先生のコメント
ニボルマブ+カボザンチニブ併用療法の有効性を示したCheckMate9ER試験の延長追跡期間(中央値32.9カ月)のデータが先日発表されたが(Motzer R, et al. Lancet Oncol. 2022; 23(7): 888-98.)、今回のASCOではそのサブ解析として、depth of response(DepOR)と臨床予後との関連が発表された。興味深いことに本試験においても、他の免疫チェックポイント阻害薬併用療法(CheckMate214)での報告と同様に、DepORとPFSやOSとの関連性が確認された。今後はDepORが大きい症例に対してさらに腫瘍量を減少させる腫瘍切除術の追加により、予後延長が期待できるかなど細かな検討が必要になると考えられる。