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Genitourinary Cancer Today 2021 No.3
ASCO 2021:腎細胞がん
進行性腎細胞がん患者においてレンバチニブ+ペムブロリズマブまたはレンバチニブ+エベロリムスの併用療法と、スニチニブ単独療法を比較検討した第Ⅲ相CLEAR試験から、健康関連QOL解析と、サブグループでの有効性評価およびランドマーク解析の報告
#4502 Health-related quality-of-life analysis from the phase 3 CLEAR trial of lenvatinib plus pembrolizumab or everolimus versus sunitinib for patients with advanced renal cell carcinoma
Robert Motzer氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, USA)
#4560 Analysis of the CLEAR study in patients with advanced renal cell carcinoma: Depth of response and efficacy for selected subgroups in the lenvatinib-plus-pembrolizumab and sunitinib treatment arms
Viktor Grünwald氏(University Hospital Essen, Germany)
更新日:2021年8月2日
進行性腎細胞がん(RCC)の一次治療として、レンバチニブ+ペムブロリズマブまたはレンバチニブ+エベロリムスの併用療法とスニチニブ単独療法とを比較検討したCLEAR試験から、健康関連(HR)QoL解析が発表された。スニチニブ単独療法と比べ、レンバチニブ+エベロリムス併用療法は同等または不良、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法は同等または良好であることが明らかになった。
また事後解析として、サブグループでの有効性解析と、最大腫瘍縮小割合(depth of response:DPR)と全生存期間(OS)との関連性を探索したランドマーク解析の結果も別途報告され、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法はスニチニブ単独療法と比べ、IMDCリスク分類に関わらず有効性転帰を向上させていたことや、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法において、6カ月時点で完全奏効を得られた患者は24カ月全生存率100%で、標的病変の縮小率が75%を超えた患者でも近い結果が得られたことが示された。
■CLEAR試験について
CLEAR試験では進行性淡明細胞型RCCの一次治療として、患者1,069例を対象に、レンバチニブ(20mg 1日1回経口投与)とペムブロリズマブ(200mg 3週毎静注)を併用する群(LEN+PEMBRO群:355例)と、レンバチニブ(18 mg 1日1回経口投与)とエベロリムス(5mg 1日1回経口投与)を併用する群(LEN+EVE群:357例)、スニチニブ(50mg 1日1回経口投与、4週投与、2週休薬)を単独投与する群(SUN群:357例)の3群に無作為割り付けした。その結果、SUN群と比較してLEN+PEMBRO群は主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)(ハザード比[HR] 0.39、95%信頼区間[CI]: 0.32 – 0.49、p<0.001)と、副次評価項目のOS(HR 0.66、95% CI: 0.49 – 0.88、p=0.005)、および奏効率(ORR)が有意に向上し、LEN+EVE群はPFS(HR 0.65、95% CI: 0.53 – 0.80、p<0.001)とORR(SUN群36.1%、LEN+PEMBRO群71.0%、LEN+EVE群53.5%)が有意に向上したことが報告されている1,2)。
■HRQoL解析
治療によるHRQoLへの影響は、副次評価項目の一つであった。FKSI-DRS、EORTC QLQ-C30、EQ-5D-3Lを用い、ベースラインと、2サイクル目以降の各サイクルの初日および休薬中の診察時にHRQoLを評価した。FKSI-DRSは進行性RCCで重要と考えられる9項目の症状を評価し、総スコアは0~36で高スコアであるほど良好なHRQoLを示す。EORTC QLQ-C30は9項目の複合的スケール(機能性5項目、身体症状3項目、健康全般のQoL[GHS/QoL])と身体症状6項目を評価し、スコアは0~100で、GHS/QoLと機能性は高スコアほど良好、身体症状は高スコアほど不良である。EQ-5D-3Lは5項目からなる健康状態インデックスと視覚的スケール(VAS)で評価し、インデックスのスコアは0~1で1が完全な健康状態を示し、VASスコアは高いほど良好である。これらの調査方法において、ベースラインから46週目(15サイクル目)までの変化(最小二乗平均値の差)と、無作為化から最初の悪化までの期間(time to first deterioration; TTD)、および無作為化から回復が見られない悪化までの期間(time until definitive deterioration; TUDD)を解析した。HRQoLのデータがあり、1回でも投与を受けた患者は解析対象とした。
LEN+EVE群とSUN群との比較では、FKSI-DRS、EQ-5D-3L、およびEORTC QLQ-C30のほとんどの項目で差は見られなかったが、EORTC QLQ-C30のGHS/QoLと疼痛、食欲不振、下痢の4項目はSUN群が有意に良好だった。
LEN+PEMBRO群とSUN群との比較では、FKSI-DRS、EQ-5D-3L、およびEORTC QLQ-C30の多くの項目で差は見られなかったが、EORTC QLQ-C30のGHC/QoLと疲労、呼吸困難、便秘の4項目はLEN+PEMBRO群が有意に良好だった。TTDはEORTC QLQ-C30の身体機能性(HR 0.81)と呼吸困難(HR 0.79)、食欲不振(HR 0.82)、およびEQ-5D-3LのVAS(HR 0.83)において、LEN+PEMBRO群が有意に延長し、FKSI-DRS と、EORTC QLQ-C30のその他の項目、およびEQ-5D-3LのインデックスはSUN群と差はなかった。またTUDDについては、FKSI-DRS とEQ-5D-3L 、およびEORTC QLQ-C30の認知機能と経済的困難を除く全項目がLEN+PEMBRO群で有意に延長していた。認知機能と経済的困難はSUN群と差はなかった。
Motzer氏はCLEAR試験で示された有効性と安全性およびHRQoLの結果は、進行性RCC患者の一次治療としてLEN+PEMBRO併用療法を支持するものだと述べた。
■サブグループによる有効性評価とランドマーク解析
また、別途発表されたポスター演題では、事後の探索的解析として、LEN+PEMBRO群とSUN群におけるIMDCリスク分類と標的病変の有無のサブグループでの有効性と、DPRとOSとの関連性を検討したランドマーク解析の結果が報告された。
まずIMDCリスク分類(中/高リスク、低リスク)ごとにPFS、OSおよびORRを評価した。PFS中央値は中/高リスク患者では、LEN+PEMBRO群が22.1カ月、SUN群が5.9カ月(HR 0.36、 95% CI: 0.28-0.47)、低リスク患者ではそれぞれ28.1カ月、12.9カ月(HR 0.41、 95% CI: 0.28-0.62)と、どちらのサブグループもLEN+PEMBRO群が優位であった。
OSについても中/高リスク患者ではLEN+PEMBRO群が優位であった(HR 0.58、 95% CI: 0.42-0.80)。一方、低リスク患者ではイベント数が少なく、OSは評価不能だった。
ORRは、中/高リスク患者でLEN+PEMBRO群が72.4%(うち完全奏効[CR]14.0%)、SUN群が28.8%(うちCR 3.9%)(オッズ比[OR] 6.60、95% CI: 4.39-9.90)、低リスク患者ではそれぞれ68.2%(うちCR 20.9%)、50.8%(うちCR 4.8%)(OR 2.00、 95% CI: 1.17-3.42)で、いずれもLEN+PEMBRO群が優位であった。
腎臓における標的病変の有無による解析では、腎臓に標的病変を有する患者のPFS中央値がLEN+PEMBRO群で22.1カ月、SUN群で7.5カ月(HR 0.40、95% CI: 0.25-0.65)、腎臓に標的病変がない患者においてはそれぞれ25.8カ月、9.4カ月(HR 0.38、95% CI: 0.30-0.49)で、どちらもLEN+PEMBRO群で延長していた。同様にOSについても、どちらのサブグループもLEN+PEMBRO群が優位であった(標的病変あり:HR 0.44、 95% CI: 0.26-0.77、標的病変なし:HR 0.76、 95% CI: 0.54-1.09)。ORRは腎臓に標的病変を有する患者でLEN+PEMBRO群が71.8%、SUN群が27.0%(OR 10.55、 95% CI: 4.54-24.52)、腎臓に標的病変がない患者ではそれぞれ70.8%、38.5%(OR 3.78、 95% CI: 2.66-5.37)であった。
また標的病変の縮小率と24カ月生存率との関連性について、6カ月、9カ月、および12カ月時点でのランドマーク解析を行った。各ランドマークの時点で生存していた患者を、標的病変のベースラインからの最大縮小率で分類し評価した。LEN+PEMBRO群における6カ月時点のランドマーク解析の結果、24カ月全生存率は確定完全奏効(CR)が得られた患者で100%だったのに対し、標的病変の縮小率が>75%で100%未満の患者と、縮小率が100%の患者は91.7%であった。9カ月時点および12カ月時点のランドマーク解析においても、標的病変の縮小率が>75%の症例で同様の結果が得られた。一方、SUN群における6カ月時点のランドマーク解析では、確定CRの患者が100%、縮小率が100%の患者が87.5%、縮小率が>75%で100%未満の患者は60.0%だった。
以上より研究グループは、これらの結果はLEN+PEMBRO併用療法が進行性RCCの一次治療の新たな選択肢となる可能性を支持するものと結論付けた。
1) Motzer R, et al. N Engl J Med. 2021; 384(14): 1289-300.
2) Motzer R, et al. Oral presentation at ASCO-GU. 2021. Abstract #269.
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監修 亭島 淳先生のコメント
CLEAR試験における、淡明細胞型進行性腎細胞癌に対する一次治療としてのレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法のHRQoL、サブグループによる有効性の評価、ランドマーク解析についての報告がなされた。早期に著明な病変の縮小がみられた症例では良好なOSが得られ、リスク分類にかかわらずスニチニブに比較して高い有効性が期待できることとともに、スニチニブ単独に比較して同等または良好なHRQoLが示された。複合免疫療法のレジメンが次々と登場する中、泌尿器科医にとってはこれまでに使用経験のないTKIであるレンバチニブを含んでいる本レジメンの幅広い有用性を印象付ける結果である一方、今後は他の多くのレジメンとの特徴づけとすみわけが課題である。
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